映画秘宝にあやかる

 映画秘宝のアレに触発されてオールタイムベストを考えた。

 「映画に順位なんてつけるべきではない!」とも思うんだけど、こういったベストを見るのは楽しいし、作るのも楽しい。

 「オールタイムベスト」には自己紹介的な意味合いが強く含まれる。それは、自分はこういった人間ですよ、という表明にほかならない。自己紹介的意味合いがあるからこそ、「オールタイムベスト」は外部の目線を意識して編まれる。だからそこには当然「他者からこのように見られたい」という願望が(多かれ少なかれ)反映されているはずだ。そして僕のベストもそうした願望から逃れることはできていない。そういったところも含めて他人のオールタイムベストは面白いと思う。

 

 オールタイムと銘打っておいてなんだけどここ五年以内に観た映画、の中から選んだ。堪忍。というのは昔こういうランキングを作ったことがあってそれとダブっちゃうのはおもしろくないなーと思ったので。

 その時のやつがこれ↓

2001年宇宙の旅』1968年 

 『メトロポリス』1927年

『サンセット大通り』1950年

 『マルホランド・ドライブ』2001年

父、帰る』2002年

戦場のメリークリスマス』1983年

太陽がいっぱい』1960年

アラビアのロレンス』1962年

『キッズリターン』1996年

パルプフィクション』1994年

 ほとんど中学生の時に観た映画なので正直思い出補正がすごくあると思う。

 今から見るとバランスの良いチョイスになってしまっていて面白くない。所謂「名作」とされている作品ばかりで意外性がないところも……うーん……これは多分に「他人の眼を気にした」ベストのように見えてしまう(実際はそんなことはないのだけれど)。映画を見始めたばかりの時期は、何を見ていいかわからないので名作とされているものばかり見ていたのかもしれない。

 

ということでこっちが新しいやつ↓ 

※順不同、番号は便宜上

  1. 白熱 1950年
  2. ゼアウィルビーブラッド 2007年
  3. ドライヴ 2011年
  4. 暗殺の森 1970年
  5. チャイナタウン 1974年
  6. 黒い罠 1958年
  7. ブルーベルベット 1986年
  8. メトロポリス 1927年
  9. 悪魔のいけにえ 1974年
  10. マッドマックス怒りのデスロード 2015年

 『メトロポリス』がダブっているのは、この前見返して、改めてすげーと思ったから。

 ここ五年はホラー映画などのジャンル映画ばかり見ていた。映画に関する知識が(多少は)増えて、自分がどのような映画を好むのかが大体わかってきたからだと思う。恐怖を題材にしたものばかり見ていたのは(高原英里の言葉を借りるならば)「生の明るい部分のみを見ようとする欺瞞に耐えられない正直な心があるから」 だ(あるいは単純にストレスが溜まっているのかもしれないけれど)。

 同じようなものばかり見ていても見識が広がらないのでこれからはもっと色んなジャンルを見ていきたい。

 

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※ネタバレあり

1.『白熱』

画面の中で面白いことしか起こらないという意味で娯楽映画の鏡のような作品。

 主人公コーディ(ジェームズ・キャグニー)の造形には、後の『スカーフェイス』のアル・パチーノや『グッドフェローズ』のジョー・ペシを先取りしたかのような迫力があり、思考と行動が直結しているかのような主人公の存在が映画全体のテンポを引き上げる。主人公のキャラクターとサスペンスを持続させる数々の仕掛けのおかげで「退屈」という概念から最も遠いところに位置するであろう一本。最初から最後まで停滞感がまったくない怒涛の犯罪映画。。

(ヘイズコードのせいか)ギャング映画の主人公は物語の中で死すべきことを免れえない。しかし死によって彼らは英雄と化すのだ。そのことを明快に示したラストシーン。

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2.『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

 理由もなく富をひたすらに追求し続ける、人間的バックボーンの欠如した怪物的な主人公。彼の黒い衝動は、荒野から凄まじい勢いで噴出する石油のイメージをもってして完璧に表現されている。徹底的にアンチカタルシスな演出によっても隠し通せないその迫力が全編に渡って緊張感を絶やさない。

 エンディングの暴力的なまでの切れ味の良さがまた素晴らしい。化物じみた一本。

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3.『ドライヴ』

 徹頭徹尾、監督の美意識に貫かれた一本という意味で,21世紀の『サムライ』(ジャン・ピエール・メルヴィル)とも呼ぶべき作品。初見の時には、その魅せ方の妙にヤラレっぱなしだった。

 レフン監督はタランティーノと同じくサンプリング世代の映画作家だが、彼の引用元はジャンル映画から所謂シネフィル好みの映画まで多岐にわたる。普通なら有り得ない取り合わせによって新しい映画を作る、抜群のサンプリングセンスが彼の武器だ(『オンリーゴッド』の元ネタの一つが鈴木清順の『東京流れ者』だと知った時には驚愕してしまった)。

 とにもかくにもカッコイイ映画。余りにも美しいバイオレンス映画。

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 4.『暗殺の森

 すべてのカットが美しい、ほとんど完璧な映画。計算され尽くされた構図はカメラワークや動的なモチーフによっても全く破綻をきたさない、どころかその美しさを増加させる。まさしく「動く絵画」と呼ぶにふさわしい映像が全編にわたって展開される至福の113分。
光と影による巧みな演出や、衣装に至るまですべての面において突出したヴィジュアル。特に前半はムッソリーニ政権下の無機質なファシズム建築による、幾何学的構図の映像が惚れ惚れするほど美しい。

 全てが無に帰したかのようなラストシーンの虚無感と、エンドロールに流れる曲による余韻の深さよ。

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5.『チャイナタウン』

  最早伝説的に巧みな脚本は言わずもがな、抑制の効いた余りにも「大人な」語り口が堪らない。これみよがしな演出は皆無にも関わらず、終始、画面から眼を話すことができない。全く主張しない超絶技巧。浮ついたところなど欠片も存在しない一本。

 作られた瞬間からクラシック。

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6.『黒い罠

 同じフィルムノワールでありながら『チャイナタウン』と違って、これ見よがしの超絶技巧満載の一本(ウェルズの映画はいつもそうだけど)。サービス精神全開。個人的には『市民ケーン』よりもこちらの方が好み。

 フィルムノワールの(とりあえずの)末尾を飾るに相応しい堂々たる怪作。

↓伝説的なオープニングシークエンス。

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7.『ブルーベルベット

 50年代アメリカ的な、典型的に閑静な郊外の住宅地の裏側に潜む暗黒。リンチは物事の裏側を、幸福の裏側にある何かを見続けずにはいられない。彼の映画には、その二つの側面が連続しているという感覚がある。主人公は道端で、切り落とされた人間の耳を「偶然にも」拾ったことがきっかけで、悪夢のような世界を垣間見てしまう。二つの世界が耳というモチーフを媒介に交錯する。

 町山智浩の『ブレードランナーの未来世紀』によればこの作品は『素晴らしき哉、人生』を元にして生まれたそうだ。アメリカの国民的映画を元にしてこのような作品を作り上げてしまうリンチには敬服するしかない(あるいはその二面性こそがアメリカという国の本質なのかもしれないけれど)。

 徹底的にアメリカ的な俗っぽい感性と芸術家肌な感性が共存する作風は唯一無二。

↓語弊があるかもしれないが、「わかりやすく」映画全体を象徴したオープニング

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 8.『メトロポリス

 映画史に残る傑作を取り上げて何を今更と思われるかもしれないが、改めてとてつもなく凄まじい映画だと言いたい。こんな映画はもう二度と作られることはないと断言できる。20年代ドイツが生み出した巨大な奇形児。全てのシーンが歪で神々しい。「普通」のショットが一つもないという意味で真の意味での怪作。大聖堂のような映画。

 

 ↓パブリックドメインとなっているのでyoutubeで全編見ることができる。是非に。

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9.『悪魔のいけにえ

 映画を見ていて「映したらダメな人が出てる!」と思ったのは初めてだった。後に『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』を読んで荒木飛呂彦も全く同じことを思った、ということを知って嬉しかった思い出がある。

 ドキュメンタリータッチのざらついた無造作な映像が、現実の「厭な」部分を隠さずに徹底的に映し出す。消化しやすいように加工されていない「生」の感覚が強烈な一本。要するにこの映画は「逃げていない」のだ。低予算であることもそうした印象に一役買っているのかもしれない(美男美女がでてくるわけでもないので)。

 それでいてレザーフェイスが夕陽をバックにチェーンソーを振り回すラストシーンは余りにも美しい。

 いずれにしても映画を見ていて「見てはいけないものを見てしまった!」という感覚に襲われることは非常に稀だ。この映画が奇跡的なものであることは、同じ製作陣で作られた続編が一作目のセルフパロディとなってしまったことからも明らかだ(あれはあれですごく面白いけどね)。

 カーペンター版の『ハロウィン』と比べてどちらを選ぼうか死ぬほど悩んだ。

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10.『マッドマックス 怒りのデスロード』

 

Immortan!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

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