『アメリカン・ナルシス―メルヴィルからミルハウザーまで 』
著者の専門であるアメリカ文学についての論文集。
「神の死」以降の「自己意識」の問題を『白鯨』における(ナルシスの)鏡としての水面に探る、「白鯨あるいは怒れるナルシス」。
そこでは、自己こそが最大の他者であるというパラドックスが提示される。自己は自身を距離によって対象化し他者化することでしか認識されえない。そのため自己意識の中には「他者」という亀裂が潜んでいるのだが、自己の創造者として絶対的に自己自身であろうとしたエイハブは、それ故に自らの中に「他者性(=モービーディック)」を発見してしまい破滅してしまうのだ。