Mollusk

集積所。

2022-01-01から1年間の記事一覧

『エドワード・ホッパー作品集』

エドワード・ホッパー作品集 作者:江崎聡子 東京美術 Amazon 98点の収録作品を、8つの切り口によって分類し、解説した作品集。 エドワード・ホッパーと言うと、ある種の「アメリカ的なもの」を代表するような作品を描いた画家、という印象が強い。そんな彼の…

『アメリカン・ナルシス―メルヴィルからミルハウザーまで 』

著者の専門であるアメリカ文学についての論文集。 「神の死」以降の「自己意識」の問題を『白鯨』における(ナルシスの)鏡としての水面に探る、「白鯨あるいは怒れるナルシス」。 そこでは、自己こそが最大の他者であるというパラドックスが提示される。自…

『チャイナタウン』あるいは不可視の結末

映画において「衝撃的な結末」は、観客の日常への帰還を遅延させる。その遅延の間に映画は自身の印象を観客の脳裏に刻み込む。それは映画が取るある種の生存戦略とでも言うべきもので、『チャイナタウン』もそうした戦略を取った映画の一つである(そしてそ…

『雨に唄えば』の雨は誰のものか

劇映画において、「雨」はしばしば、登場人物の悲しみや、それに伴う涙を表現するモチーフとして用いられる。外的世界の様態に内面の感情を託すという意味で、この演出は表現主義的なものだと言えるだろう。 このような演出は伝統的だが、使い古されたもので…

『須賀敦子全集 第1巻』

須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫) 作者:須賀 敦子 河出書房新社 Amazon デビュー作である『ミラノ 霧の風景』と著者のイタリアでの人的交流の拠点となった書店での日々を描いた『コルシア書店の仲間たち』、そして十二人の人物たちの肖像をスケッチ風に描き出…

『ヤンヤン 夏の思い出』

ヤンヤン 夏の想い出 [DVD] ウー・ニエンジエン Amazon 台北に住む、それぞれに大きく、小さい問題を抱えた家族のドラマをこれ以上ないほどに美しい映像で描き切った、エドワード・ヤンの遺作。 映画は結婚式から始まり葬式で幕を閉じるが、その間の群像劇は…