Mollusk

集積所。

小さな革命の実践

横道誠『みんな水の中』と綾屋紗月、熊谷晋一郎『発達障害当事者研究』を読んだ。発達障害の当事者が、「自身の接している世界がどのようなものであるのか」について、経験を交えながら書いた本である。ユクスキュルの「環世界」の概念を引くまでもなく、同…

速さの外に身を置くこと。

基本的に本を読むという行為は孤独なものだ。本を読む時、人は内省的にならざるを得ない。今、「本」という言葉を使用した。「本」と一口に言っても、現代の日本においてその内実は多岐にわたる。資格試験のための参考書や料理本、ファッション雑誌なども当…

『ブラッド・メリディアン』

会話文に引用符が使用されず、読点がほとんどない独特の切れ目ない文章によって、登場人間の会話や行動は詩的な情景描写と溶け合い、均質化していく。それに加え、情念の描写の徹底的な排除によって、物語上で行われるありとあらゆる残虐行為は世界の大いな…

『形象と時間―美的時間論序説 』

造形芸術と時間の関係性を様々な角度から論じた一冊。全体は二部に分かれており、第一部では形象をささえる物質性に時間が及ぼす影響について語られている。作品の物質的側面を崩壊させる負の時間性についての議論から、時間的距離の蓄積が価値となる骨董へ…

『エドワード・ホッパー作品集』

エドワード・ホッパー作品集 作者:江崎聡子 東京美術 Amazon 98点の収録作品を、8つの切り口によって分類し、解説した作品集。 エドワード・ホッパーと言うと、ある種の「アメリカ的なもの」を代表するような作品を描いた画家、という印象が強い。そんな彼の…

『アメリカン・ナルシス―メルヴィルからミルハウザーまで 』

著者の専門であるアメリカ文学についての論文集。 「神の死」以降の「自己意識」の問題を『白鯨』における(ナルシスの)鏡としての水面に探る、「白鯨あるいは怒れるナルシス」。 そこでは、自己こそが最大の他者であるというパラドックスが提示される。自…

『須賀敦子全集 第1巻』

須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫) 作者:須賀 敦子 河出書房新社 Amazon デビュー作である『ミラノ 霧の風景』と著者のイタリアでの人的交流の拠点となった書店での日々を描いた『コルシア書店の仲間たち』、そして十二人の人物たちの肖像をスケッチ風に描き出…